Libraリザーブ

リザーブ

Christian Catalini, Oliver Gratry, J. Mark Hou, Sunita Parasuraman, Nils Wernerfelt *

本書は、(1) リザーブの目的、(2) リザーブの成り立ち、(3) 各参加者とリザーブとの関わり、(4)リザーブの経時的変化、の各パートで構成されます。

1 リザーブの目的

現在の暗号通貨の多く(ビットコイン、イーサなど) には裏付け資産がありません。その結果、主なユースケースは投機と投資になっています。価値が大幅に上昇する可能性があるため、多くの人が後で価値が上がることを期待してそれらのコインを購入しているのです。これらの通貨の長期的価値やそのネットワークに対する信用と同様に、その価値も変動し、時として大幅な価値の揺れを生み出します。

Libra は幅広く利用されることを目指しており、利用者にとって価値が比較的安定した通貨になるよう設計されています。例えばヨーロッパの消費者は、今日のコーヒー代のユーロと明日のコーヒー代のユーロとがほぼ同じであると確信を持てます。同様に、Libra 保有者もLibra の価値が相対的に安定し、時間の経過によって大きく変動しないことを確信できます。

リザーブは価値保全を達成するための鍵となるメカニズムです。各コインを安定した流動資産(後述) で完全に裏付けて、競合する通貨取引所やリクイディティプロバイダーと連携します。そうすることで、ユーザーはLibra コインをいつでもリザーブと同じか近い交換比率で売却できると確信できるようになります。これにより、Libra コインは発行当初から価値を持ち、他の暗号通貨の投機的な価値変動から守られるようになります。リザーブの仕組みとシステム内のさまざまなアクターについてはこのセクションで後述しますが、まずは、そもそもなぜリザーブが作られたのかを説明することが重要です。それは安定と価値保全のためです。

2 リザーブの成り立ち

このセクションは複数のパートに分かれています。まず、リザーブの資金源はどこにあるか、第2 に、リザーブの投資方法、第3 に、リザーブはどこで保持されているか、そして第4 に、各Libra コインを裏付ける実際の資産は何かです。

リザーブの資金源リザーブの資金源は2 つあります。メンバーによる出資と、Libra ユーザーです。協会は創立者へのインセンティブをLibra コインで支払い、ユーザー、販売者、開発者による採用を促します。ユーザー側では、新しいLibra コインの作成のために、法定通貨と等価のLibra を購入してその法定通貨をリザーブに移行する必要があります。したがって、リザーブはLibra に対するユーザーの需要が高まるにつれて増大します。つまり、Libra の作成を増やす方法はただ一つ、法定通貨によるLibra 購入を増やしてリザーブを増大させることです。

リザーブの投資方法Libra のユーザーはリザーブからの利益を受け取りません。リザーブは低リスク資産に投資され、時間をかけて利子を生み出します。この利息収入はまず協会の運営費用を補助するために活用されます。Libra エコシステムの拡大と発展のための投資、非営利組織や多国間組織への助成金、エンジニアリング調査などの用途があります。

リザーブの保持方法カウンターパーティーリスクを抑えるために、リザーブは信用格付けで投資適格として認められた証券保管機関で構成され地理的に分散されたネットワークに保管されます。証券保管機関の選定と配置においては、リザーブの資産に対する保護措置、高度な監査可能性と透明性、集中型リザーブのリスクの防止、運営効率の達成が主要なパラメーターとなります。

各Libra コインを裏付ける実際の資産実際の資産は、安定していて信用のある中央銀行が発行する通貨や公債など、価値の変動率の低い資産の組み合わせになります。Libra の価値は法定通貨バスケットと実質的に結び付けられており、バスケット内のどの通貨も価値が変動することから、Libraの価値も変動します。リザーブは価値変動の可能性と程度を抑制するように構成されています。特に、価値が下落するときに(たとえ経済危機であっても) 下落幅を抑えることを目指しています。その目的を達成するため、前述のバスケットは資本保全と流動性を念頭に置いて構成されています。資本保全での観点では、高インフレになる可能性が低く、債務不履行に陥る確率が低い政府が発行する公債にのみ投資します。また、そうした事態が発生する可能性をさらに低減するために、1 つではなく複数の政府を選択することでリザーブを多様化しています。流動性の観点では、前述のような政府が発行し、流動性の高い市場で取引される短期公債を利用する計画です。流動性の高い市場とは、1 日に数百億から数千億にまで及ぶ取引量を日々扱っている市場です。これにより、流通するLibra 数の拡大や縮小に応じてリザーブの規模を簡単に調節できるようになります。

3 各参加者とリザーブとの関わり

ユーザーがリザーブに直接対面することはありません。効率を高めるために、協会に認定された再販業者のみが大量の法定通貨とLibra をリザーブに出し入れできます。認定再販業者はユーザーを相手に暗号通貨を売買する取引所やその他の機関と統合しますので、現金からLibra への交換やLibra から現金への交換を希望するユーザーはそのような機関を利用することで、Libra をいつでも交換できます。

協会は通貨ポリシーを規定しません。コインの発行と焼却は認定再販業者からの需要に応じてのみ行います。協会がインフレを引き起こしたり、通貨の価値を下げたりすることについて、ユーザーが懸念する必要はありません。コインが新たに発行されるには、発行されるコインと等価の支払いが再販業者からリザーブに対して行われる必要があります。協会と再販業者の取引の結果、需要が拡大したときには新しいコインが自動で発行され、需要が縮小したときにはコインが自動で焼却されます。リザーブが積極的に運用されることはありませんので、Libra の価値の上昇や下落は通貨取引市場の動向の結果でしかありません。

協会は世界中にある規制された電子取引所へのLibra の上場を促進します。こうした取引所にはユーザーがLibra を売買できるウェブポータルとモバイルアプリの両方があります。ユーザーが法定通貨とLibra をできるだけ簡単に交換できるように、主な暗号通貨交換業者や金融機関が認定再販業者として継続して取引することについても話し合いが行われています。

金融における消費者保護と法執行機関

金融サービスや金融商品の消費者は弱い立場にあります。Libra エコシステムでは強力な消費者保護をお約束します。また、消費者保護を管轄する規制当局は、管轄内で提供されるサービスを構築するプロバイダーに関与することを望むことでしょう。Libra ネットワークの開発初期段階では、創立者は規制当局と協力して、技術革新を促進しつつ高水準の消費者保護を維持する規制環境作りに取り組みます。

他の通貨や金融インフラストラクチャと同様に、悪質行為者がLibra ネットワークを不正に利用しようとするでしょう。ネットワークはオープンで、インターネットアクセスがあれば誰でもアクセスできます。しかし、取引所やウォレットなどの形をとるネットワークのメインのエンドポイントは、適用される法令や規制に従い、法執行機関と協力する必要があります。他の多くのブロックチェーンと同様に、Libra ブロックチェーンの取引レジャーは第三者が分析して不正を検出して罰則を科すことができるように公開されています。

4 リザーブの経時的変化

リザーブの裏付けは時間が経過しても〸分に維持されます。つまり、競争力が働く取引所市場があれば、ユーザーは今日にも明日にも未来にも、保有するLibra コインを裏付けリザーブの時価に近い交換比率で売却して法定通貨に変えられると確信できます。協会は、バスケット内の資産に関連する地域で発生した経済危機に対処するときなど、市況の大きな変化に応じてバスケットの構成を変えることがありますが、価値の保全を常に目指します。また、こうした変更には例外的対応と協会評議会による圧倒的多数の票が必要になるものと見込まれます。

重要なことは、リザーブの規模はユーザーのLibra 保有残高によって決まるということです。したがって、他の一部の暗号通貨とは異なり、外部要因によって供給が制限されることはありません。これには需要に応じたLibra エコシステムの拡大や縮小を可能にするという重要な役割があります。これによって「取り付け騒ぎ」を抑えることもできます。ユーザーが取り付け騒ぎを起こす主な動機は、コインの裏付けが不〸分であるため、ユーザーが我先に裏付け資産を手に入れようとするからです。コインが完全に裏付けられていて、競争力が働く取引所エコシステムがあれば、コインの流通量やLibra を売却したユーザーの数に関係なく、Libra の時価に近い交換比率でコインを法定通貨に戻すことができます。リザーブの時価はユーザーがLibra を売却して手に入れる法定通貨の価値によっていつも支えられるということです。

Libra と既存通貨の共存を目指します。Libra はグローバルなものであるため、協会独自の通貨ポリシーを策定するのではなく、バスケットに含まれる通貨を発行する中央銀行のポリシーを継承することとしました。すでに述べたとおり、法定通貨とLibra をリザーブに出し入れする仕組みを採用したことで、Libra のアプローチは他の(香港などの) カレンシーボード制の運営方法に非常に似たものになります。中央銀行は独自の判断で通貨を発行できますが、一般的にカレンシーボード制では新たに発行する通貨を完全に裏付けるのに〸分な外貨資産がある場合にのみ法定通貨を発行します。このようなシステムを導入する主な2 つの理由は、変動性の低さに基づいて基盤となる資産を選択することによる安定性と、将来の不正使用(裏付けのない追加のコイン発行など) からの保護です。

このプロジェクトの主な目的は、何〸億もの人たちが変動率の低い暗号通貨を利用できるようにすることです。発行当初から世界中で簡単に使える交換媒体として、マイクロペイメントなど新たなデジタルネイティブのユースケースをサポートする暗号通貨を目指します。Libra リザーブは、価値保全、信頼構築、そしてユーザーと販売者と開発者がネットワークにもたらすリソースの保護においてきわめて重要な役割を果たしています。Libra ネットワークを非許可型に徐々に移行するにつれて(非許可型合意への移行をお読みください)、協会は地理的な分散をさらに進める方法や、リザーブが経済危機から回復する力を高める方法、ユーザーのために安定性と価値保全を確保する手段を改善するための方法を探求します。

協会はこれらの目標に向かって創立者と一丸となって活動します。研究者やLibra コミュニティからのフィードバックやアイデアをお待ちしています。

謝辞

このホワイトペーパーについての有益な議論やフィードバックに関して以下の方々に感謝を申し上げます。Adrien Auclert、Ravi Jagadeesan、Scott Duke Kominers、Roberto Rigobon、Catherine Tucker、Kevin Zhang。

筆者はFacebook, Inc. の子会社であるCalibra に勤務し、本ペーパーをクリエイティブ􀀀コモンズ􀀀ライセンス(表示 4.0 国際)に基づきLibra 協会に提供します。Libra エコシステムの詳細については、Libra ホワイトペーパーをご覧ください。

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